2018年1月16日 韓・中FUD(Fear/Uncertainty/Doubt)ショック

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本記事は、連載企画『そのとき何が?!<仮想通貨相場のトリガーたち>』の1記事です。過去記事については、左記連載企画名をクリックしてご覧ください。

2017年12月に史上最高値を付けたビットコインですが、そこから2018年の9月に約66万円付近でレンジ相場に突入するまで急騰・急落を繰り返しながら価格を切り下げていきました(安値更新)。

この約9ヶ月の期間は本連載にとってはネタの宝庫ともいえる期間です。

また、上下に大きなボラティリティ(価格変動率のこと、以下「ボラ」)を伴っていたことでトレーダーにとっては稼ぎ時・あるいは退場のきっかけになった期間でもありました。

今回振り返る暴落はその期間中の暴落の1つです。
今回の暴落には韓国と中国の2ヵ国が関係しています、2ヵ国の大きなファンダメンタルズ情報(以下「ファンダ」)が同時多発的に絡み合って起きた暴落を振り返っていきましょう。

2018年1月16日に起きた暴落の値動き

これまで振り返ってきた暴落ではきっかけとなったファンダと絡めて「マウントゴックス事件」「チャイナショック」などのように名前がついていましたが、2018年1月16日に起きたこの暴落には特に名称は付いていないようでした。

名前がつかない主な理由としては、冒頭でも説明しましたがこの時期のビットコインは大きなボラ を伴っていたため、1つ1つの急騰・急落に名前を付けるほど注目に値しなかったのでは…と考えています。


その証拠に、上記のチャート画像をご覧いただければ一目瞭然だと思いますが、1月16日以外にも大きな陽線や陰線がついた日が多くあることがわかると思います。

ちなみに今回振り返る暴落での下落率は取引所によって多少誤差はありますがおよそ25%(140万円→105万円)と十分暴落と言えるレベルの下落を記録しています。

これに近い値動きが頻繁に起きてたと考えるとこの時期のビットコインがいかに不安定なものだったか、ということも理解していただけるかと思います。

暴落の概要

さて、この「暴落」ですが、一体何が原因だったのでしょうか?

値動きとしては15~16日にかけての下落が該当しますが、その下落要因となったファンダは韓国発のある事象に起因しています。

韓国でのFUD

下落要因の1つ目は韓国で起きていた仮想通貨取引禁止に関する動きです。

結果から言えば仮想通貨取引を禁止するという事実はなく、一連の流れがFUD(事実と異なる偽情報)として 市場に不信感を与えビットコイン暴落の一因となりました。

具体的に流れを追っていくと、2018年1月11日に韓国の法務部から「韓国における取引所での仮想通貨取引の禁止法案」を起草している…との発表がありました。

この発表を受けて韓国市場は混乱。
しかし、韓国大統領府はこの発表について確認がとれておらず慌てて発表を否定する事態に。

その後も韓国国内での混乱は続き、韓国大統領府は15日に仮想通貨取引を禁止する予定はなく、 法務部からの発表は「韓国政府による確認がないまま発表された」という内容を正式に通達します。

騒動自体は政府の発表で収まったものの、韓国政府内での連携が取れていなかったということで韓国国内では 本発表を行った法務相 Park Sang-ki(朴相基/박상기) 氏の辞任を求める請願が殺到。

約6万人もの署名が集まる事態になりました。

No Cryptocurrency Trading Ban, South Korea Government Confirms

On January 15, in a public press conference, South Korea President Moon Jae-in’s executive office Blue House spokesperson Jeong Ki-joon, emphasized that there will be no cryptocurrency trading ban in the near future.

In an official announcement, spokesperson Jeong noted that the cryptocurrency regulation task force created by the government will improve and alter the original proposal by the Justice Ministry to ban cryptocurrency trading and introduce practical regulations to foster the cryptocurrency market.


中国での仮想通貨取引所規制

2つ目は中国で発表された仮想通貨取引所相当のサービスを規制するという発表です。

1つ目の韓国の規制の動きは結果的にFUDでしたが、こちらは中国政府から正規の規制として発表されました。
発表があったのは1月15日で1つ目の韓国のFUDの騒動が沈静化した日と一致します。

この規制では中国国内での仮想通貨取引所相当のサービスが軒並み規制されオンラインプラットフォームやモバイルアプリも対象とされ企業・個人問わず規制するということで、市場はこの規制をかなりネガティブに捉えました。

China Escalates Crackdown on Cryptocurrency Trading

China is escalating its clampdown on cryptocurrency trading, targeting online platforms and mobile apps that offer exchange-like services, according to people familiar with the matter.

While authorities banned cryptocurrency exchanges last year, they’ve recently noted an uptick in activity on alternative venues. The government plans to block domestic access to homegrown and offshore platforms that enable centralized trading, the people said, without being more specific about how policy makers define such platforms.

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仮想通貨市場の取引額の多くを占めていたアジア2ヵ国のネガティブなファンダが重なったことにより15日から16日にかけてビットコインは暴落、先ほどの説明のような値動きとなりました。

ネガティブなファンダの多い日だった

この暴落に大きな影響を与えたファンダとしては上記2つが当てはまると考えられますが、実は15日は仮想通貨取引規制に関するネガティブなファンダが重なった日でもありました。

15日~16日にかけて発表された仮想通貨取引に関するネガティブなファンダをまとめてみました。




仮想通貨の取引規制に関する情報は、他の国でも噂が出ていたものの、韓国発のFUDが発端となり市場の不信感が爆発してしまったことは間違いありません。

規制自体は仮想通貨市場が、消費者保護を含めて前に進むために必要な措置として捉えられている部分もありましたが、仮想通貨投資家にとっては心理的な重しとなり、下方向に力が働いてしまうことになりました。

暴落後の値動き

暴落後は反発が期待されるところですが、この時期のビットコインは下落後は高値を切り下げながら推移していた時期なので暴落前の水準に回復することはなく110万円前後を底値に幅の広いレンジ相場を2週間 ほど作る形になりました。

その後、2月に入り底値を割ってさらに下落していきます。

ネガティブ情報に反応しやすい時期

2017年末の史上最高値を頂点に、2018年の年明け以降下落基調だったビットコインはポジティブなファンダへの反応が薄く、逆にネガティブなファンダやFUDの情報に敏感に反応するようになっていました。

大きな下落に対しては反発も強く出ていましたが、暴落前の水準を回復できた上昇はほとんどなく9月に約66万円の底値に着地するまで徐々に高値を切り下げていきました。

今回振り返った暴落では取引高の大きい国だけでなく世界各地域で取引規制という同じようなネガティブなファンダが流れたことにより市場に対する不信感や将来性を疑問視する動きが強まってしまったのが暴落を加速させた要因ではないかと思います。

仮想通貨市場に参加している私たちはこういった同時多発的なファンダ情報によって市場の動きが急変するv可能性があるということは常に心に留めてトレードなどを行いたいところです。



本連載でとりあげた相場トリガーの一覧とBTC騰落率(命名の一部は当編集部で独自作成)

時期 トリガー名 BTC 原因
高値 下値 差額 騰落率
2011年6月~11月 Mt.GOXショック 1,400円 160円 1,240円 -90% ・取引所Mt.GOXのハッキング
2017年9月2日~15日 チャイナショック 55万円 30万円 -25万円 -45% ・BTCC閉鎖
・中国政府ICO違法見解
2017年12月17日~22日 先物上場失望ショック 220万円 145万円 -75万円 -45% ・BTC先物情報
・BTCドミナンス低下
2018年1月16日 韓・中FUDショック 140万円 105万円 -35万円 -25% ・韓国政府仮想通貨違法認定
2018年1月29日~2月5日 Coincheck事件ショック 125万円 80万円 -45万円 -35% ・取引所Coincheckのハッキング
2018年3月6日~10日 BINANCEハッキングショック 122万円 93万円 -29万円 -24% ・BCHのハードフォーク
2018年11月15日~18日 BCH分裂ショック 71万円 49万円 -22万円 -31% ・BCHのハードフォーク
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執筆者
hubexchangeのメディア部門を担う「編集部」の公式アカウントです。 編集長はもぐらいだー(ikenaga)。ハッキングされた取引所の事象発生から現在までを追う「ハッキング探偵」などの企画立案や執筆時マニュアルの策定などの編集部内外の標準化ツールの整備に注力中。メディア事業に興味があるアシスタント希望者求む!
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