以前は、無法地帯と呼ばれていた仮想通貨取引も、近年は法律整備が整い取引者や取引行為について法律による規制が入るようになってきています
例えば、仮想通貨として代表的なビットコインは2009年より取引が始まりましたが、「通貨」と呼ばれるほど認知されておらず、法律上でも「モノ」として扱われていました。
ところが、認知度が高まり、仮想通貨の種類も数千種類以上に増え、資本的な面での意味も持つようになったことから、仮想通貨の取引を巡っての詐欺やGOX(不正アクセス等による逸失)などのトラブルが起こるようになりました。
そこで、定められたのがいわゆる仮想通貨法です。
仮想通貨に関する法律とは、端的に1つの法律があるのではなく、貸金決済に関する法律(貸金決済法第三章の二)やその他、金融商品取引法などの総称です。
仮想通貨の流通に伴い2017年4月に成立した、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律要綱」の中で、貸金決済に関する法律の一部が改変されました。
改正貸金決済法では、第2条で仮想通貨とは、以下の1もしくは2のいずれかにあたるものと定義されています。
つまり、1については、改正貸金決済法における仮想通貨とは、取引所での基軸通貨となっていて円やドルといった法定通貨との価値算定が容易におこなえる仮想通貨、いわゆる「BTC」や「Ethereum」、「Ripple」などが該当します。
また、2については、取引所に上場していて売買可能な仮想通貨のみならずwalletを用いて送金・着金が可能な未上場の仮想通貨も含まれます。
これら1、2を総じた仮想通貨が改正貸金決済法の適用を受けますが、改正貸金決済法以外にも、取引様態に応じて、金融商品取引法や外国為替及び外国貿易法が問題になってきます。
知らないうちに法律違反を犯さないためにも、各種法律や取引者、および取引行為に適用される法律ついて知っておきましょう。
仮想通貨に関する法律は、主に、仮想通貨を使って取引をする人や法人、業者などに適用されます。それぞれどのような人や法人が該当するのか知っておきましょう。
購入者とは、一般的な仮想通貨ユーザー。仮想通貨交換業者(いわゆる取引所)を通じて仮想通貨の購入や売却、交換や送金をする人が該当します。
代理者とは、自分では直接仮想通貨を購入しないものの別の人に購入を代行してもらう人をさします。
仮想通貨交換業者とは、仮想通貨の売買またはほかの仮想通貨との交換等を業として行う法人で金融庁(財務局長)の登録を受けた者を意味します。
登録されている業者以外の法人による仮想通貨取引は貸金決済法にて禁止されおり、違反した場合は罰則が適用されます。
仮想通貨について、貸金決済法にて取り決めがなされたものの、現状はまだまだ経過措置的な面が多くあります。そのため、法律が適用される取引についても幅があります。どのような行為が該当するのか、代表的な取引についてみていきましょう。
事象 | 説明 |
購入 | 日本円やドルなどの法定通貨を仮想通貨に換える取引 |
売却 | 仮想通貨を法定通貨へ換える取引 |
交換 | ビットコインでイーサリアムを購入するなど、特定の仮想通貨を別の種類の仮想通貨に換える取引 |
移転 | 特定の仮想通貨の所有権を別の持ち主へ譲渡すること |
仮想通貨の購入、売却、交換、譲渡取引については、一般的な仮想通貨取引となるため、改正貸金決済法などの規定が問題なく適用されます。
仮想通貨界でICO案件と呼ばれることの多い、ICOとは、Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨による資金調達法のことを指します。
クラウドセールやトークンオークションとも呼ばれるICOは、出資額に見合ったトークンが発行され上場後の差額で利益を取る方法です。
現在、ICOには以下の理由から改正貸金決済法が適用され、違法かどうかが議論されています。ここで問題となるのが、発行されるトークンが改正資金決済法の仮想通貨にあたるかどうかです。
仮想通貨にあたるとすれば、ICO企業は仮想通貨交換業者の登録をしなければならないのではないかということです。
つまり、仮想通貨交換業者として登録していないにもかかわらず、仮想通貨にあたるトークンを発行し販売(交換)すると違法になる場合があります。
合法的にICOをするならば企業側は自社トークンが仮想通貨に該当する場合をみこして、仮想通貨交換業の登録をしておく方がいいでしょう。
IEOとは、Initial Exchange Offering(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)と呼ばれる資金調達法のことです。企業側がトークンを発行し、取引所に上場させたのち、トークンは取引所を通じて投資家に購入され、企業側の資金調達が完了します。
IEOはICOとは異なり、取引所のユーザ―を幅広く投資家として迎えることができるメリットがありますが、ICOと異なり取引所を挟むことで法律規制逃れをしている側面もあります。
こちらもICO同様、改正資金決済法の適用となりますが、トークンの販売自体を仮想通貨交換業として登録済みの取引所に委託しているならば合法的な取引といえるでしょう。
ここまで、主に改正貸金決済法と各種取引の関係についてお伝えしてきましたが、仮想通貨取引に関しては別途関係する法律があります。
特に問題となる法律についてご紹介します。
仮想通貨を語るうえで外せないのが金融商品取引法、および、金融商品販売法です。 両法律では、有価証券や金融商品の取引に関して定めがされており、仮想通貨はこれらの金融商品もしくは有価証券に該当するかが議論されています。
金融商品取引法では第2条において有価証券や金融商品にあたるものを明記していますが、この中に仮想通貨は含まれていないため、有価証券や金融商品そのものとしては取り扱われません。
ただし、ICOで発行されるトークンは、性質によっては有価証券とみなす余地があるため注意が必要です。
また、ICO案件は詐欺事例が多いため、一般的な投資家の被害を防ぐためにトークンが有価証券にあたる場合、金融商品取引法上のファンド規制が適用されます。ファンドとして出資を募り運用するにあたって金融庁ではファンド側に事前の登録を義務化しています。
トークンの性質上、現段階では仮想通貨のファンド運用はグレーゾーンとされています。
しかし、投資家保護の観点から金融庁では2019年の通常国会中には金融商品取引法の改正をおこない、ファンド規制の対象とする方針が固められています。
仮想通貨は、テロ集団の資金やマネーロンダリング(資金洗浄)目的に用いられるリスクがあるため、国としては、予防的な措置として資金移動を徹底する流れにあります。そこで、外国為替及び外国貿易法においては、3,000万円以上の対外的な取引においては、財務大臣への報告義務を要するとしています。
現時点では仮想通貨に対する規制は明確なものが少なく、法律の抜け穴をかいくぐっての犯罪も多く行われているのが実情です。国の動向としても、投資者保護や詐欺事件対策に向けて各種法律を改正する方針がだされています。今後の法律改正には注目しておきましょう。