[04] ブロックチェーンのこれから <未来予想図>

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ブロックチェーン市場は2022年には117億ドルに到達

2018年にIT専門調査会社 IDC Japan 株式会社から発行された「ブロックチェーン関連市場予測」には、ブロックチェーンに関連する世界の支出額は、2022年には117億ドルに達する見込みがでています。

ブロックチェーンへの支出は、2017年~2022年の予測期間を通じて順調に増加し、5年間の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は73.2%になるとIDCでは予測しています。
また、2018年の支出額は15億ドルと見込まれ、これは2017年の支出額の約2倍でした。[出典:1]

米国IDC Customer Insights & Analysis 副社長のジェシカ・ゴエプファート氏は今後のブロックチェーン市場について

「今後、来歴管理や資産/商品管理を中心に、ブロックチェーンの最大の支出および成長が見込まれます。サプライチェーンの複雑性、情報の不完全性と相まって、サプライチェーンに関連する不祥事の増加がブロックチェーンへの投資やプロジェクト実施を促進するでしょう。サプライチェーンのステークホルダーは問題をエンドツーエンドで解決することに関心を持っています。製造業では製品の配送保証にニーズがあり、小売業や卸売業では販売商品の有効性や品質の保証にニーズがあります。さらに消費者は、供給者に対して、商品に関するより高い透明性を求めています」

上記の様に言及しています。

マイナンバーや住民票などの情報連携

内閣官房からは、将来像としてマイナンバーや住民票などの情報連携を提案しており(上図)[出典:2]、ブロックチェーンによって業務工数を削減したり連携時間を短縮できるだけでなく、セキュリティの強化も図れるとしています。

ブロックチェーンは、P2Pネットワーク、分散台帳、暗号化、スマートコントラクト、コンセンサスアルゴリズムなどの複数の技術を組み合わせた、完全性と可用性が高い堅牢な分散型記録管理システムの実現が可能です。

情報セキュリティでは、「機密性」「完全性」「可用性」の3つの要素を確保することが求められており、その点ではブロックチェーンは、情報セキュリティ対策として有効なテクノロジーです。[出典:3]

個人情報保護法(PDPA)など、海外でのデータプライバシー法はデータ主権に基づいた法規制になりつつあり、プライバシー保護に対して厳しくなっています。

企業における顧客や社員のパーソナルデータの取り扱いは、管理責任の明確化や、個人データの取り扱いの厳格化など、プライバシー保護を考慮したビジネスプロセスの見直しが昨今必要となり、法制度上の課題に対する取組として、

  • ブロックチェーン技術以前に分散型社会を前提としていない法規制の見直し
  • スマートコントラクト等に関する実運用上の指針の策定

などが社会実装を促進するため必要と議論されています。

加えて、処理性能や保守・運用性に関する技術についても、今後更なる研究開発の必要性があり、サイバーセキュリティとデータ保護のテクノロジーを導入し、厳密なデータ活用を実施していくことが求められています。

ブロックチェーンハッカソン2019

最新の活動として、2019年2月に経済産業省は学位・履修・職歴証明や研究データ管理の真正性が担保される社会基盤構築を目指し「ブロックチェーンハッカソン2019」[出典:4]を主催しています。

このハッカソンでは「学位・履修・職歴証明」ならびに「研究データ管理」の2テーマについてブロックチェーン技術の適応可能性を検討しました。

学位証明の分野では、少子化の影響を受けて教育機関の統廃合も進んでいるため、自分の卒業した学校がなくなり卒業証明や成績証明を取得することが困難なケースが発生してきていること、転職やキャリアアップを目指した卒業後の勉強の機会の頻度が増え、それらを入手しなければならない機会も多くなってきていることなどを背景に、個人がいつ、どの学校を卒業したのか、自分の学歴や学習の履歴を明確に証明できることを目指しています。

個人の学位証明や学習履歴を生涯にわたって証明する手段やシステムをブロックチェーン技術により検討しています。

もう一つの議題は研究データ管理に関するもので、近年大学などの研究機関において、研究不正問題が顕在化し、産業界においてもデータの改ざんが問題となってきています。
研究自体もオープンソース化している状況にあり守秘性の担保も課題です。

こうした状況から、経済産業省ではブロックチェーン技術のこれらの課題に対する社会実装をより一層促進しています。

今後ブロックチェーンとの適合性が高いと期待されるユースケース

上記に挙げたマイナンバーや住民票などの情報連携や学位・履修・職歴証明や研究データ管理以外にも、ブロックチェーンと適合性の高い分野のユースケースを以下に幾つか挙げます。[出典:5]

サプライチェーン

製品の原材料からの製造過程と流通・販売までを、ブロックチェーン上で追跡可能であると考えられています。

サプライチェーンにおけるブロックチェーン技術の活用にあたってのメリットとしては、製品などの来歴を、改ざん不可能な形で、ステークホルダー間で共有することが可能になることが挙げられます。

ブロックチェーン技術の活用により、信頼のおける組織が存在しなくとも、ブロックチェーン上に記録されたデータが改ざんされてないことが保証され、信頼して取引を行うことができるため、市場が活性化することが期待されます。

例えば、英国のスタートアップ Everledger は、ダイヤモンドの来歴を記録し、真贋証明を行うブロ ックチェーンシステムを構築しており、現在 100 万個以上のダイヤモンドの情報が記録されています。

ダイヤモンドの取引にあたって、現在では、原産地等の証明書の偽造による詐欺やそれに伴う保険金の支払などにより、業界全体として多額のコストが発生しているのが現状です。

同社によれば、原産地の証明書は、依然として紙ベースで管理されており、紛失や偽造等が発生しているとされています。

そのため、ブロックチェーン上に原産地証明書や取引履歴を記録することで、改ざん不可能な形でダイヤモンドのバイヤー等の間で来歴情報を共有することが可能となり、信頼してダイヤモンドの取引が行われることが期待されています。

土地の登記

土地の物理的現況や権利関係の情報を、ブロックチェーン上で登録・公示・管理することが可能です。

土地や建物、所有者に関する情報のほか、それらの移転や抵当権の設定なども記録、管理することも考えられ、関連する業務の効率化が図れると想定されています。

シェアリングエコノミー

資産等の利用権移転情報、提供者や利用者の評価情報をブロックチェーン上に記録することが可能であると考えられています。

現在は Uber や AirBnB のような特定の企業が運営するプラットフォームにより提供されている、いわゆるシェアリングエコノミー型のサービスにおいて、利用権の管理および取引を、ブロックチェーン上で行うことを想定しています。

ブロックチェーンは大きな可能性を秘めた技術です。

高い可用性や安全性、コスト削減などのメリットが多いブロックチェーンはさまざまな方面から注目を集めています。新しい技術だからこその事例の少なさや今後の開発の必要性、それに伴う法制度の見直しや指針の策定を積極的に官民双方でしていく必要性がありそうです。


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