Binance Chain(バイナンスチェーン)が目指す未来

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ブロックチェーンは、

  • 分散性(Decentralized)
  • ピアツーピア(P2P)

といった理念のもと、サトシ・ナカモトなる人物がビットコイン(Bitcoin)を生み出したことで知られていますが、こと「暗号資産取引所」においては中央集権型取引所(Centralized Exchange:CEX)が主導権を握る時代が長く続いていました。

本稿の主人公であり1000万人以上のユーザーを擁する世界最大級の暗号資産取引所「BINANCE」も、ご存知の通りCEXの代表格であり、その動向に耳目が集まっていることは言うまでもありません。

さて、そんなBINANCEですが、2019年4月に分散型取引のサポートを目的としたブロックチェーンプロトコル「バイナンスチェーン・メインネット(以下「バイナンスチェーン」)」をローンチしました。

バイナンスチェーンは、BINANCE独自のネイティブなブロックチェーンであり、分散型取引所版BINANCE「BINANCE DEX(Decentralized Exchange)」の礎を成すものでもあります。

DEXとは何なのか?

さて、本題に入る前に、読者の前提知識の補足も兼ねてDEX(Decentralized Exchange)について少しだけ触れてみたいと思います。

冒頭でも述べた通り、ブロックチェーン技術の本来の目的は、中央管理者を置くことなく、取引や運用を成立させるという分散・自立性です。
しかしながら、暗号資産が生まれてから、それを取り扱う形態として最も一般的であったのが中央集権型取引所(Centralized Exchange:以下「CEX」)でした。

CEXは、買い手と売り手の間に取引のためのプラットフォームを提供し、仲介管理者として機能します。

しかしながら、そのことは暗号資産が排除すべく最も注意を払っていた(というか嫌っていた)「中央集権的な存在」の復権にほかなりません。

CEXは、つまるところ「暗号資産やブロックチェーン自体の背後にある『Decentralized(分散化)』というビジョンと矛盾」している存在なのです。
これに対し、分散型取引所(Decentralized Exchange:以下「DEX」)が開発され、徐々に使用されはじめているという背景があります。

CEX(centralized Exchange)とDEX(Decentralized Exchange)の違い

2014年頃にBitSharesを基盤にしたDEXが誕生し、その後もいくつかの分散型取引所が誕生しました。

CEXとDEXの比較表

CEX DEX
KYC(本人確認) あり なし
取引速度 速い 遅い
ユーザーサポート あり なし
取引データの保全方法 データベース
(オフチェーン)
ブロックチェーン
取引データの改ざん可能性 高い 低い
国家/政府当局による介入 あり なし
プライベートキー 中央管理者が管理 ユーザーが管理
流動性 低~高(取引所次第) 低い
問題発生時の資産保全 あり なし

具体的な比較詳細説明については、hubexchangeブロックチェーンラボの記事『CEXからDEXへ?暗号資産取引所の行方』に譲りますが、ざっくりとCEXとDEXを比較すると上記表のようになります。

DEXは、取引履歴をブロックチェーンに記録するため、改ざんがしづらくセキュリティ面に優れている…等々、CEXでは実現し得なかった課題を解決し得る存在である…ということがしばしば言われます。

しかしながら、CEXにも良い面はあり、相対的に見ると

  • 取引の処理速度(DEXの場合はブロックチェーンにおける承認速度)
  • 流動性

上記のような課題がDEXには残されていると言わざるを得ませんでした。

BINANCE DEXは、従来のDEXの課題に対処できるのか?

一方で、BINANCE DEXは?というとこれらの課題を消化しきっているように見えます。

決済(取引承認)速度においては、基本的には「即時」であることをChangpeng Zhao(CZ)氏が公言していますが、具体的な数値としては、

1秒間に140万件のトランザクションを処理

することが目標値として定められており、この数値は、CEX版「BINANCE」の取引速度と同等とのことです。

バイナンスコインは独自のブロックチェーンメインネット上に存在するようにアップグレードされ、ネイティブコインになります。それと同時に、バイナンスは企業からコミュニティに移行します。

また、1年前の2018年3月にBINANCE広報が上記発表をしていますが、この内容の示唆するところは、運営主体の分散化であり、究極的には現在のCEX型「BINANCE」からの決別のように思えます。

CEX型「BINANCE」にはすでに1,000万人以上の会員が存在していますが、徐々にDEXに移行させることで、DEXの最大の課題でもあった【取引の流動性】を克服しようとしていることは間違いありません。

そして、その移行に際してCEX版「BINANCE」で慣れ親しまれた取引所トークン(独自トークン)であるBNB(Binance Coin)をネイティブブロックチェーン化し、BINANCE DEXの主役に仕立てあげた点は・・・もともと計画されていたことかもしれませんが・・・「お見事!」としか言いようがありません。

取引所トークン(独自トークン)関する詳しい情報は、『取引所トークンとはなんなのか?』をご参照ください。

BINANCE DEXの礎となるBinance Chainとは?

バイナンスチェーンは、バイナンスが提供する独自のブロックチェーンです。

バイナンスチェーン・メインネットの開始により、これまでに時価総額で7番目に大きい暗号通貨であるバイナンスコイン(BNB)が、ERC-20からBEP-2に移行し、BNBがネットワーク取引を支援することになります。

BINANCEの発表によると、元々、イーサリアムのERC規格上に構築されたDappsだったBNB(Binance Coin)を、BEP-2と呼ばれる独自規格のネイティブブロックチェーンへ移行することで誕生したのがBinance Chainです。

圧倒的「取引承認」の速さ

Binance Chainの特徴は、その「取引承認」の速さでしょう。

具体的な数字を挙げると、

ブロックチェーン シンボル コンセンサスアルゴリズム コンファーメーション1までの時間
Bitocoin BTC PoW(Proof of work) 10分
Ethereum ETH PoS(Proof of Stake)へ移行予定 20秒
Ripple XRP PoC(Proof of Consensus) 4秒
Steller XLM SCP(Stellar Consensus Protocol) 2~5秒
Monacoin MONA Pow 90秒
Bitshares BTS DPoS 3秒以下
BinanceCoin BNB 未命名 即時(1秒以下)

Ethereumはネットワーク・コンファメーション(コンセンサスアルゴリズムによる取引承認/ブロックの追加)を取るまでに約20秒、そしてブロックチェーンの元祖であるBitcoinは平均10分の時間を要します。

一方、バイナンスチェーンはというと、「即時」承認であることが発表されています。

また、これから発行する新しいトークンだけではなく、今までイーサリアムベースのERC-20で開発されてきたトークンも含めて、バイナンスチェーンのBEP-2規格をベースとして容易に発行することも可能であることが発表されています。

CZが

バイナンスチェーンは通貨ならびに決済手段としての役割が主であり、イーサリアムが強みとしている「スマートコントラクト」の機能を必要としないトークンにとっては、はるかに速く、そして発行や運用にかかるコストは安価になる

と語ったことからも、Binance ChainがBINANCE DEXのためのブロックチェーンに限定されず、イーサリアム「Ethereum(イーサリアム)」の地位をも脅かす存在になる日はそう遠くないように思います。

hubexchangeはBinance Chainを使うかも?!

柔軟性が高く、自動的かつ自立的な契約(コントラクト)を必要としないサービスと連携するブロックチェーンにはBinance Chainはうってつけかもしれません。

上図はhubexchangeのサービス概要ページに掲載している図ですが、「hubexchange」は、データの組み合わせによる価値創出(てっとり早くいうと、皆さんが作成[1]する「カード」や開発者による新規「カード」テンプレートの開発[3])と、データ流通のエコシステム(作成された「カード」の共有[2]と開発者が開発したカードの流通[4])を主目的としたサービスですが、これらサービスの利用にかかるユーティリティトークンとして、ブロックチェーンの発行をすすめています。

当初は、イーサリアムのERC規格で構築を予定していたのですが、複雑な契約を自動化する必要がないこともあり、かつ大量のデータ消費が予想されることもあり、『バイナンスチェーンいいかもしらん』という話がでております。

既存のERC-20規格で発行されたBNB(Binance Token)はどうなる?

イーサリアムのERC-20規格から、BEP-2のネイティブ規格(独自規格)に移行するBNBですが、すでに保有している方としては、「何か移行手続きが必要なのか?」といったところが大きな不安点ではないでしょうか。

基本的には、2019年4月23日以降はERC-20規格の引き出しはサポートせず、またBINANCEのウォレットに入れておくことで、自動的に新規格のBNBにスワップすることが公表されています。

なお、BEP-2規格のBNBはERC-20規格のBNBと同数を発行することが確約されており、ERC-20からBEP-2にスワップした際に、ERC-20のBNBはバーンすることが発表されています。[3]

Binance Chainをサポートするウォレット

BINANCE DEXのユーザーの資金は、ユーザーのデバイスにのみ秘密鍵を格納するサーバーフリーの技術が確立されている「分散型ウォレットアプリケーション」に保存・保存されるとのこと。

Binance Chainをサポートするウォレットとしては

  • Trust Wallet
  • Ledger
  • Enjin
  • Magnum Wallet
  • CoolWallet
  • coinomi Wallet
  • Atomic Wallet
  • ZelCore Wallet
  • Infinito Wallet
  • Math Wallet
  • Ellipal Wallet
  • Guarda Wallet and Exodus
上記12個であることが発表されています。

ちなみに、Trust Walletは2018年7月バイナンス社が買収したウォレット会社であり、バイナンスチェーンとBINANCE DEXのネイティブウォレットとしても認められています。
Trust Walletを利用することで、モバイルやデスクトップのウォレットインターフェースからバイナンスDEXにアクセスして、バイナンスチェーン(BNB)を使った高速な取引を体験できることが示唆されています。

バイナンスチェーンの設計、機能の特徴

バイナンスチェーンの公式ドキュメントサイト[8]には、以下のようなバイナンスチェーンの設計の主な特徴が紹介されています。

Binance Chainの特徴

特徴 概要
資金の預かり・保管なし DEX利用者は自分の秘密鍵と資金を自身で管理することが可能
高性能 DEX利用者は自分の秘密鍵と資金を自身で管理することが可能
低コスト 手数料と流動性コスト。
ユーザーエクスペリエンス(UX) Binance.comと同様のUXを提供します。
公正な取引 フロントランニング等を最小限に抑えます。
開発可能 永遠に向上する技術スタック、アーキテクチャ、およびアイデアを使って開発することができます。

また、バイナンスチェーンの機能として、以下の機能が挙げられています。

機能
1 BNBの送金、受け取り
2 新規トークンの発行
3 発行した新規トークンの送信、受信、バーン/鋳造、フリーズ/フリーズ解除
4 2つの異なるトークン間にトレーディングペアを作成
5 2チェーン上に作成された取引ペアを通じた売買

さらに、バイナンスチェーンのチームとコミュニティは、技術の進歩と要求の傾向を大切にし、資産の流通と価値の容易化を目指すことを表明しています。

独自チェーン化により想定できるバイナンス/BNBの未来

今回のバイナンスチェーンの発表で、CEOのChangpeng Zhaoは以下の様に語っていました。

私たちは、分権化された取引所が新しい希望と新しい可能性をもたらし、管理者による承認を必要としない、透明な金融システムを提供すると信じている。[9]

仮想通貨の理念である、「中央集権管理の打破」である分散型の提案は、DEXへの移行に直結しています。

新しい技術、分散型であるからこその利点や課題も含め、バイナンスチェーンを筆頭に、進化していく道すじがあるといえます。
また、別の観点では、従来はバイナンスという企業としてユーザーにサービスを提供していましたが、今後DEXに移行することで「企業からコミュニティ」に変化していきます。

Binance Chainイコール暗号資産BNB(binance coin)のブロックチェーンであるため、BNBを保有するユーザーが「分散化された主導権」を握ることになります。 スマートコントラクトで各種契約が定義され、自立型のDEXとなることで、CEX型BINANCEの中央集権管理者であった企業としてのBINANCEは消滅していくことになります。

つまるところ、「企業からコミュニティ」に変化するということは、分散化されたBNB保有者による管理に移行する・・・ということにほかなりません。
その際、企業では各国の規制に準拠しなければならなかったものが、グローバルなコミュニティ上ではどうなるのか、という疑問も生まれてくる点にも注目です。

各国規制が強まる中、グローバルなブロックチェーンネットワークのコミュニティでは、どこのルールもあてはめず、コミュニティ自体で自立規制していく、という新しい考え方が生まれていくのかもしれません。

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執筆者
仮想通貨データ分析ツール「hubexchange」のCPO(Chief Product Officer)。たまにプロジェクト費用捻出に出稼ぎ中。Planning,Analysis,UI-design,Marketing,Writing,PRなど全方位的にコーディング以外なんでも担当。
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