[03] ブロックチェーンの活用事例 <ブロックチェーンの未来>

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ブロックチェーンの分散型台帳技術は、金融以外にも幅広い分野への応用が期待されています。

ブロックチェーン技術は、プラットフォームの参加者間での情報の共有や取引情報を時系列に記録することを前提としているため、IoT、認証及び商流管理を含む多くの分野での利用可能性が探られています。

経済産業省の依頼の元行われた野村総合研究所の調査資料[出典:1]では、個人情報保護以外にもブロックチェーン技術を改良しながら⾦融以外の分野にユースケースが広がっており、その広範なユースケースとサービス事例が上図にまとめられています。

さらに2018年の報告書にはブロックチェーンに関する調査・研究を進めている三菱総合研究所のブロックチェーン技術のもたらす社会インパクトと導入ステータスについての分析[出典:2]がまとめられています。

社会的インパクトの大きい分野として、公共サービスや政府、証券取引所の他に、IoT や医療・教育、サプライチェーンなどの分野を挙げています。

公共サービスや政府、証券取引所、サプライチェーンの分野に関しては、日本においても海外においても取り組まれていますが、その他の医療・教育、IoT といっ た分野では海外での取り組みが先行しており、国内では取り組みがまだ発達していないと分析しています。

以下、世界の活用も含めた現在までの事例を紹介します。

公共サービス分野

公共分野で活用が検討されている分野は幅広く、自治体の予算管理、投票、届出の管理、社会保証などから、特許、土地登記、徴税、婚姻・出産届等の証明サービスがブロックチェーン上で実現を試みることのできる分野です。

たとえば、ロンドンの市長選では、候補者の一人が予算管理をブロックチェーン化することを公約として掲げているほか、エストニア、ホンジュラスなどの新興国でも公共システムへのブロックチェーンの採用に関心を表明している国も現れています[出典:3]

2018年3月7日には、西アフリカに位置するシエラレオネで大統領選挙が行われましたが、その選挙結果の追跡に、世界で初めてブロックチェーン技術が使用されました。

シエラレオネ政府がブロックチェーン技術を採用した理由は、「現存する投票システムの中で、偽造が不可能で、かつ最も透明性が高いから」と語っています。

スマートコントラクトとブロックチェーンを組み合わせることによって、「Decentralized Autonomous Organization=DAO(自律分散型組織)」が成立し、この自律分散型組織は、中央の管理主体が存在しなくとも、分散型で自動的・自律的に統治される組織形態を構築します。

これを投票に適応すると、「投票者自身が、選挙を監査できる」さらに透明性の高い投票が実現するのです。

シエラレオネ政府は、スイスの投票用ブロックチェーンのスタートアップ企業であるAgora(アゴラ)社の協力を得て、この投票の結果追跡を実施しました。

アゴラ社は既にアフリカやヨーロッパの複数の国々と交渉を開始しており、もし行政がブロックチェーンによる選挙を導入すれば、現在かかる費用の約70%がカットできるビジネスモデルを構想しています。[出典:4]

知的財産分野

2018年野村総合研究所が発表した「ブロックチェーン技術を活用した新たなコンテンツビジネスの可能性調査」[出典:5]では、低コストでP2Pのやり取りを可能にし、データのトレーサビリティや透明性の高い取引を可能にするブロックチェーン技術を活用した、コンテンツビジネスでの有効性を調査し、発表しています。

たとえば音楽業界では、ブロックチェーンを用いた権利情報のデータベース化と、 権利処理の仕組み化をめざす企業が登場しています。

スウェーデン発のSpotifyはアーティストへの適正なロイヤ リティ支払いのため、2017年 4月にBCスタートアップ企業の Mediachainを買収しました。

Mediachainでは、分散化したP2Pのデータベースでアプリと各メ ディア、情報を紐付けるサービス、クリエイターのための権利帰属エンジン、 クリエイターに作品の使用料が渡るようにするための仮想通貨を開発していますが、Spotifyでは現状、自社の提供楽曲とそのアーティストおよび楽曲の権利者とを紐付けるテクノロジーの開発を進めています。

将来、技術的には他社データベースとの連携や決済機能との連携も可能となってくる予定です。

映像業界では、海外でP2P型動画配信プラットフォームが構築され始め、日本では既存の制作会社向けの権利情報データベースが考案されています。海外の例としては、エストニアのViulyはEthereumによるビデオ共有プラットフォームを構築しました。

これにより、ビデオ制作者は、プレミアムコンテンツへのアクセスを販売し、ユーザーからの寄付を受け取るか、広告主から直接収益を得て、ユーザーは無料のビデオを見ることでトークンの報酬が得られます。プラットフォーム上の支払いはすべてトークン(VIU)で行われています。

このような技術は、クールジャパンを代表する要素でもあるアニメ、マンガ、映画、音楽等のコンテンツビジネスへの活用が期待されています。

ストレージ(保存)分野

ストレージ 分野も、ブロックチェーンを利用してネット上のデータ管理を行うサービスが提供される可能性を探っています。

従来のビットコインの例の様に、データその ものをブロックチェーンに保管するとブロックチェーンの容量を肥大化させるため、データそのものの管理は別の手法をとる場合もあります。

分散型クラウドストレージStorj は、ブロックチェーンで様々な電子ファイルを管理するサービスを提供しています。その内容は、データそのものは暗号化され、P2P 上に分散した状態で保管されるため、他人には閲覧不可能で、障害耐性も高いストレージサービスとなっているようです。

また、分散型ファイルストレージに関するプロジェクトを行うFilecoin は、ユーザー が普段余らせているファイルを保存する容量(ストレージ) をブロックチェーン上で貸し借りし、ストレージを提供するユーザーにはインセンティブを付与する仕組みを目指しています。

医療分野

電子カルテや投薬記録など、医療に関するデータをブロックチェーンで管理する構想も広がっています。

プライバシーを守るために医療データそのものはブロックチェーンには記録せず、カルテが管理されている医療機関等へのパスのみを管理していく、といった方法が提案されています。

たとえば、BitHealthでは、ブロックチェーンを使って、世界中から自分のカルテのデータを安全に参照できるようにすることを目指しています。

これらの活用事例を基に、企業と行政は、ブロックチェーンの特徴と、既存のシステムからの置き換えにかかるコストメリットの双方の面から考える必要があると言えます。

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